COLUMN特集

2021.04.06 繊維産業 世界制覇のブレイクダンサー「YU-YA」と遠州織物が織り成す異色のコラボレーション

浜松で生まれ、浜松で育ち、浜松発信で世界のブレイクダンスシーンを席巻するダンサー・YU-YAさん。そして、地元の基幹産業として栄え、世界的にも評価が高い遠州織物。この意外な組み合わせで制作されたショートムービーが、Youtubeで公開されています。
このショートムービーは遠州織物をPRするために作られたもので、ブレイクダンスの世界大会で2連覇を成し遂げたYU-YAさんが、遠州織物で作ったシャツ「武襯衣(むしゃ)」を身にまとい、リズミカルに働く織機の音や工場内のリアルな音をサンプリングしたオリジナルMIX音源をバックに、繊維工場の製造現場でダンスパフォーマンスを披露しています。
このコラボレーション実現の経緯や、現在の活動について、浜松を拠点に世界に向けてパフォーマンスを発信するYU-YAさんにお話を伺いました。





SOU:今回のコラボレーションの経緯をお聞かせください。

YU-YA:JFCA(一般社団法人日本フォーマルウエア文化普及協会)主催の2020フォーマルウエアコンテストでグランプリをいただいたのがきっかけで、着る物やその素材である繊維に興味を持ったんです。
浜松は昔から繊維産業が盛んだということはなんとなく知っていましたが、色々調べていくと世界に誇れる技術や伝統、文化がそこにあることを改めて認識しました。
なにより「浜松で生まれて世界へ発信」というところに強いシンパシーを感じて「遠州織物の素晴らしさをダンスを通してアピールできないか」と考えて行動していくうちに、静岡県繊維協会さんとの動画でのコラボが決まりました。



2020フォーマルウエアコンテストで着物美男としてグランプリ受賞


SOU:繊維工場や染色工場を初めて訪れた感想はいかがでしたか?

YU-YA:とても刺激的でした。規則正しく動く織機や、職人さんたちの無駄のない動き、干し場ではためく反物など、工場の中を歩いているだけでも自然に体が動くようなリズムを感じました。見学しながらイメージを膨らませて、そこに息づく伝統や、文化、技術を肌で感じ、現場の音や雰囲気が織り成すリズムに後押しされて、思い切りパフォーマンスしました。
衣装も遠州織物のシャツを着たんですが、ブレイクダンスの激しい動きにもビクともしないのには驚きました。ダンスする上でファッションも重要な表現方法の一つだと思うんですが、遠州織物を着て踊ることは、浜松を、もっと言えば静岡県を背負っている気分でした。
この動画を通じて、地元の若い世代はもちろん県外の方々にも、浜松にはこんな素晴らしい産業・文化があるんだということを伝えられたらと思っています。


 
工場内でのコラボ動画撮影風景。
織機が動く工場や、浜松注染染めの工房など、初めて見る遠州織物の作られる工程はとても新鮮で刺激的だったそうだ。



SOU:YU-YAさんがダンスを始めたきっかけは?

YU-YA:小学3年生の時、祖母に連れられて母が講師をするダンススタジオの発表会を観に行ったんです。そのステージ上のパフォーマンスを観て「自分もダンスをやりたい」と思うのが普通なんでしょうけど、そういう気持ちより先に「次の時は自分がステージに立ってるな」というイメージが鮮明に頭に浮かんできました。それを実現するために母の下でヒップホップダンスを始めたのがスタートです。やるとなったらとことん突き詰めるタイプなので、人一倍練習もして、次の公演ではセンターで踊ることができました。
そして中学2年生の時、浜松駅の前でガラスに姿を映して練習する、ブラジル人ダンサーのグループと出会いました。凄くアクロバティックな動きでカッコよくて衝撃的でした。それが「ブレイクダンス」だったんです。勇気を振り縛って「一緒に練習させて欲しい」とその輪の中へ飛び込みました。
でも、誰も踊り方や技を教えてくれなくて、誰かがやっているのを見て、見よう見まねで自分で練習して覚えていくという、これってまるで職人の世界と同じですよね(笑)。それができないと誰からも認めてもらえない。そこで随分鍛えられたおかげで、自分のダンススタイルを自分で考え、組み立てることを身につけられました。



ブレイクダンス世界大会の会場床に似た素材のボードを、自らホームセンターで探してスタジオへ。擦り切れ、傷だらけのボードは激しい練習を物語っている。


SOU:ブレイクダンス世界大会2連覇をはじめ、現在は多方面で活躍されてますね。

YU-YA:国内外のブレイクダンスの大会に積極的に参加して優勝を重ね、ブレイクダンスの世界大会「BATTLE OF THE YEAR WORLD FINAL」で2015年、2016年と優勝しました。「日本人に優勝は絶対無理だ」と言われていた大会での2連覇は嬉しかったですね。
最近では「ヒプノシスマイク」という舞台の振り付けや出演、ゲームキャラへの振り付け、ダンス以外にもCMや映画、ドラマへの出演もしています。ブレイクダンスの裾野を広げるためにも、ダンサーがダンス以外の畑でも活躍するべきだと思っています。ジャンルにとらわれず、ダンスを根幹に自分の体で世界にパフォーマンスを発信していく「ボディアーティスト」として活動していきたいんです。
それに加えて、ここ浜松で次世代のダンサーを育てるためのクラスを持つことは、自分の中でとても重要なことです。現在も下は3歳から40歳までの100名ほどの生徒を持っていて、生徒たちの成長は自分の活動の大きな原動力になっています。2024年のパリオリンピックでブレイクダンスが「ブレイキン」という新種目になるので、それに向けても「オリンピックプロジェクト」を立ち上げて、生徒をオリンピック選手として、自身は、違った形で参加できたらと考えています。生徒と一緒にオリンピックに関わる事ができたら最高ですね。


 
トロフィーとともに大切にショーケースの中に飾られる世界大会優勝の時に履いていたスニーカー。


「HSE★STYLE」スタジオでのYU-YAさんのクラス。
幅広い年齢層にブレイクダンスを教えています。



SOU:浜松から世界で活躍するためにはどんなことが必要だと思いますか?

YU-YA:まず「自分を信じる力」が大事だし必要ではないでしょうか。「都会へ行かなければ、海外へ出なければ世界は取れない」と、これまでいろんな人に散々言われてきました。でも、自分にとっては「浜松に住みながらどれだけ世界発信できるか」や「世界の人たちをどれだけ日本に連れてこられるか」という逆の考え方のほうがしっくりきます。そんな自分を信じて突き進み、世界も取ったし、国内外でたくさんのパートナーとも知り合いました。「ここを拠点に夢を叶えられる 浜松はそういう街だ」ということを大事にして、これからの活動でそれをもっと証明していきたいですね。
今回コラボした遠州織物もそうなんですが、若い世代がもっと自分の住む街「浜松」にある伝統・文化・技術に目を向けるきっかけを作るお手伝いができたらとも考えています。浜松はそんな魅力がたくさんある街なんですから。



YU-YAさんが代表を務めるHSE★STYLE ダンススクールにて




<YU-YA✖️繊維協会✖️浜松市✖️ブレイクダンス・工場ごとのコラボ動画>

古橋織布バージョン


日本形染バージョン


二橋染工場バージョン