COLUMN特集

2020.02.18 バイク産業 浜名湖2&4スワップミート

バイク仲間がつながって数千人規模のイベントに成長、
「浜名湖2&4スワップミート」


2019年11月10日、日曜日。日の出まであと数時間。夜明け前の冷たい空気の中、浜名湖競艇場の駐車場に続々と到着する個性的なバイクとクルマの列。
この日開催されたのは「浜名湖2&4スワップミート」。列をなすのはこのイベントに参加する出店者や一般の来場者たち。まだ暗い中、会場となっている駐車場に店を広げ、店主が品出しをしている最中から、お客が店先を懐中電灯で照らしながら物色する様子があちこちで見られます。
午前5時から正午までの開催。夜明け前から会場のあちらこちらで掘り出し物探しが始まる。このイベントを初めて開いたときは前夜11時の開始だった。その後、午前3時開始、日の出とともに開始の回もあった。


朝5時から昼12時までの午前中に開かれるこのイベント。実行委員代表を務めるのは、浜松市内でフレンチレストラン〈ビストロ ヒルマン〉を営むオーナーシェフ、佐藤利明さん。このイベントを始めたいきさつや、込める思いを聞きました。
浜名湖2&4スワップミート実行委員代表の佐藤さん。自身が営むレストランのテラスにて。(浜松市中区板屋町)


SOU:「浜名湖2&4スワップミート」とは、そもそもどういったイベントなのですか。

二輪車および四輪車、Swap(交換)+Meet(出会い)。つまり、バイクとクルマの部品交換会です。もともとは不要品の物々交換の場として全米各地で始まったようで、今はフレアマーケット(蚤の市)とか、イギリスではオートジャンブルなんて呼んだりもする、世界中で楽しまれているイベントスタイルです。




僕たちが主催するこのイベントは、最初は2006年に開催し、その翌年に「vol.1」、その後はほぼ年2回のペースで(諸事情や台風で延期になった回もありましたが)vol.20までやってきました。出店数300ブース以上、今では近隣県はもちろん日本中から数千人が来場する、このジャンルではおそらく日本最大級のイベントに成長したと思います。




SOU:このイベントを始めたきっかけを教えてください

部品交換会は全国各地で開催されていて、遠州地域では天竜川の河川敷で、浜松W1クラブ(※)主催による大規模な部品交換会が2000年くらいまで行われていました。いわゆるバイクブームといわれたピーク時には1000以上の出店、参加人数は数万人。間違いなく日本有数の規模だったと思います。
それが時代の流れやマナーなどの問題で少しずつ下火になり、天竜川の部品交換会が終了し、楽しみにしていた長良川部品交換会もなくなってしまいました。

※浜松W1クラブ……バイク愛好家の趣味サークル。カワサキ社製大型バイク、W1(通称「ダブワン」、現在は生産終了)のオーナーズクラブ。




残念でしたが、ぶつぶつ嘆いていても仕方ない、そんな自分が情けない。「だったら自分で開催しよう、次は我々の世代の番だ!」と、バイクショップを営むバイク仲間などに声をかけスタートしました。最初は出店数が80くらい、来場者は3000人くらいだったと思います。

 

バイクやクルマの趣味で広がる人のつながり



SOU:出店者や来場客はどのような人たちですか。

大まかに言うと地元からが半分、あとは愛知、神奈川などの近県を中心に、関西方面からの来場者も多いですね。早朝にクルマやバイクでやって来るほか、前日の周辺のホテルは予約で満杯のようです。

イベントへの出店は事前申し込みが不要で、当日に会場入口で受け付ける方式です。出店者はバイク用品を扱うプロの業者もいれば、趣味のコレクターもいます。部品交換会ですからバイクやクルマのパーツを並べる店が多いですが、その他にも服、椅子、雑貨、カタログなど、様々な物が売られています。


ずらりとワッペンを並べたブース。


中古の工具を物色中。


誰でもお店を出せるし、逆に単なるお客として掘り出し物を探しに来てもいいのです。部品交換会とは、バイクやクルマの趣味人たちが、それぞれいろんな物を持ち寄って、交流を楽しんで帰っていくイベントなのです。

まさに趣味の世界で、興味のない人には何だか分からないような物が、欲しい人には宝物だったりします。だってバイクが好きな人って、バイクのシルエットを見ただけで、メーカーや車種、年代まで当てられるくらいのマニアですから。皆さん宝探しをしに来るのです。


SOU:イベントはどのように運営しているのですか。
 
現在は主要メンバー4人、ボランティアスタッフ40人以上で運営しています。営利目的ではありませんが、イベントを続けていくために収益は上げていく必要があると考えています。ちなみに出店料は1ブース4000円です。会場ではフードブースやミュージックブースをつくったり、毎回異なるテーマを設けて企画展示をしたりと、盛り上げる工夫をしています。

来場者をもてなすキッチンカーや地元のバンド。


また、「被災地に温かい食事を届ける活動」というのをしていまして、イベントの収益をそちらの活動費用にあてたり、イベント会場で被災地への募金活動をしたりもしています。




SOU:このイベントを遠州地域で開催することの意義を感じますか。
 
当然、この場所で開催することに意味があります。イベントのコンセプトには「モーターミュージックシティ浜名湖」を掲げています。県西部地域は楽器のまちであると同時に、世界に誇れるバイクのまち。ホンダ、ヤマハ、スズキといった国産バイク大手3メーカーが誕生し、バイク産業黄金期に数多くの二輪車メーカーがしのぎを削った地ですから。こんな場所は他にありません。まさに資産ですよ。




僕らの部品交換会では、他の地域の交換会と比べて、物が動いている。つまり、よく売れると感じています。バイクやクルマでつながる趣味人が地元にちゃんといる。だから僕らのイベントが盛り上がるのだと思います。





浜名湖のロケーションにもこだわっています。イベント会場が浜名湖のほとりだからツーリングやドライブで素晴らしい景色を楽しめる。もう最高じゃないですか.


今回のテーマ車両企画は「集まれ!空冷のクルマ」

 

バイクは文化遺産
引き継いでいくべきものだと思っています

 
SOU:佐藤さんが考えるバイクの魅力とは何でしょう。
 
「自己完結」。バイクに乗ると、常に状況判断を求められ、その責任は全て自分独りで負うことになります。人任せの態度ではバイクには乗れません。だからバイク乗りには信用できる人が多いと思います。

バイク関連の古本屋を発見。​

それに、いいものづくりって、一生付き合える魅力がありますよね。僕も古いバイクやクルマを持っていますが、自分のものとは考えていません。いったん僕が預かっているだけで、次世代に引き継ぐべきものだと思っています。それだけの価値がある文化遺産だと思います。


ダッ、ダッ、ダダダダ……!! 石油発動機愛好会による旧式エンジン(発動機)の展示運転。かつて脱穀や籾すりの農機具に使われた発動機十数台が爆音と煙を上げて回る。


SOU:今後の展開について聞かせてください。
 
イベントの特徴からして、大人、それも男性が主体です。対象を若い層や女性に広げようと、これまでも手しごとマーケットを併設開催したり、女性と子どもの入場料を無料にしたりしてきました。次の世代につなげていくために、小さな子どもたちも一緒に家族で楽しめるファミリーイベントにしていきたいと考えています。

イベントが無事終了し、運営スタッフが集まって記念撮影。おつかれさまでした!


そしてさらに、「浜名湖2&4スワップミート」のホームページを作って情報発信を強化したいですね。全国に向けて? いえ、世界に向けてです。だから英語や中国語でも発信していきたいです。
ヨーロッパなど海外ではもっと大規模で魅力的なイベントが行われています。僕たちも、浜名湖を目指して外国人が訪れるようなイベントを目指したいし、遠州地域にはその条件が備わっていると思います。

これまでの「浜名湖2&4スワップミート」告知用ポストカード数種。