COLUMN特集
2026.10.08 繊維産業 台湾デザイナーが遠州産地へ。遠州織物の可能性を探る2日間

2026年4月、遠州産地振興協議会では、台湾で活動する3組のクリエイターを招き、遠州織物を使った商品開発と台湾市場への展開を目指すプロジェクトを始動しました。
台湾で活動するクリエイターたちは、実際に遠州織物の産地を訪れ、素材と向き合いながら新たな商品づくりに挑みます。開発した商品は、クリエイター側の販路や発信力を活用し、台湾市場で展開されます。
また、このプロジェクトの特徴は、完成品だけでなく、産地訪問や素材選定、試作の過程まで公開する点です。遠州織物の魅力を製品だけでなく、背景にある技術や思いごと届ける新たな挑戦として進められています。
さらに、開発する商品が「アパレル領域に限定されない」という点も、大きなポイントです。
それぞれの個性が光る台湾のクリエイターたち。彼らは遠州織物のどこに可能性を見いだすのでしょうか。この記事では、5月に行われた産地訪問・素材選定の様子をレポートします。
●プロジェクトの概要
・台湾のデザイナーによる遠州織物を活用した製品の試作・商品化
・デザイナーの既存販路・発信力を生かした市場展開
・制作過程(産地訪問・素材選定・試行錯誤など)の映像化・発信
●台湾クリエイターの紹介
左)Tony Lin&Fina Lin(トニー・リン&フィナ・リン)
アート、空間演出、ビジュアルデザイン、AIコンテンツなど複数領域を横断して活動する2人組のクリエイティブディレクター。公共施設や大型商業施設などのプロジェクトを多数手掛け、地域やブランドの世界観を視覚的に伝える表現を得意とする。商品企画から台湾国内外でのブランド展開まで幅広い経験を持ち、今回のプロジェクトにおける中心的な役割を果たす。
中央)William Hsing(ウィリアム・シン)
プロダクトデザインやバッグ・アパレル設計を中心に活動するデザイナー。日本で服飾や製造工程を学び、デザインと実製造の両面に強みを持つ。機能性や使い心地を重視した設計思想を背景に、遠州織物を生かした商品開発に挑戦。
右)You Florist(ユー・フローリスト)
金属編織(ワイヤーアート)と複合素材を組み合わせた立体作品を制作するクラフトブランド。花や地域文化をモチーフに、装飾や工芸作品へ展開する表現で注目を集める。遠州織物を衣料用途に限らず、アートやギフト領域へ広げる提案が期待される。
●スケジュール
2026年
4 月:遠州織物事業者の募集・選定
5 月:台湾デザイナー招聘(産地訪問、素材選定)
6~7 月:商品開発(デザイン検討・試作)
8 月:記録映像の公開開始
9 月:製品化に向けた最終調整
10 月:台湾における成果発表、販売開始
2026年5月、台湾デザイナーを浜松に招聘。
遠州織物がつくられる現場を訪れる

5月下旬、台湾クリエイターらが浜松を訪問しました。
初日は遠州織物の基本説明と交流会からスタート。遠州産地の歴史や製造背景が紹介され、クリエイターたちは真剣に耳を傾けます。
遠州織物は、それぞれの事業者が「自分たちの技術でしか織れない生地」を追求してきました。糸づくりから織り、染色、加工まで工程が細かく分かれ、それぞれに高い専門技術が求められます。大量生産には向かない一方、職人の技術を生かした個性豊かな生地が数多く生まれてきたことが、丁寧に語られました。
続いて産地訪問では、織機が並ぶ工場や素材保管の現場を見学。クリエイターたちは質感や厚み、織りの違いを一つひとつ確かめながら、試作に向けてイメージを膨らませているようでした。また、アパレル用途だけでなく、シートベルトやカーテンテープなど幅広い分野で活用されていることにも関心が向けられました。
Tony氏は「遠州織物は単なる布ではなく、長い時間をかけて守り続けられてきた人々の姿そのもののように感じた」とコメント。素材の背景にある土地や人の営みに強い関心を示しました。

試作品のための生地選びと意見交換会。
海外から見た遠州織物の魅力とは?

風通しがよく、柔らかな生地が気に入ったWilliam氏。「自分用のパンツを作りたい」と個人的な買い物を楽しむ場面も見られました
2日目には、商品開発に向けた意見交換会も開催。会場には各事業者が持ち寄った多彩な生地が並び、生地の質感だけでなく、最低発注数量や加工条件まで踏み込んだ対話が交わされました。印象的だったのは、生地を“見る”だけで終わらない姿勢です。手に取り、折り、光に透かしながら、素材が持つ機能や可能性を確かめる様子が見られました。
参加事業者もクリエイターからの質問に一つひとつ丁寧に答え、素材の魅力や自社ならではの強みを伝えていました。参加者からは、「クリエイターとの対話を通じて、自社の商品価値を再認識することができた」「台湾関係者との人的ネットワークが生まれ、海外展開への意欲が高まった」といった声も聞かれました。

今後の交流も期待できる、有意義な時間に

2日目の終盤に撮影した集合写真。プロジェクトを通して確かな絆が生まれています
意見交換会を終えて、帰国したクリエイターたち。この後、試作に使う生地を再度検討・決定し、商品の試作へと進んでいきます。詳細な方向性は今後の検討に委ねながらも、3組ともに「日本らしさ、浜松らしさ」を表現したいという意欲が伺えました。
ここからどんなプロダクトが生まれるのか。遠州産地の新たな可能性が、いよいよ形になっていきます。
●産地訪問・意見交換会を終えたクリエイターからのコメント
Tony Lin&Fina Lin:実は私たちが浜松を訪れて、実際に遠州織物に触れるのは2度目です。今回は遠州織物にさらに深く触れることができました。印象的だったのは、布そのものよりも、その背景にある人の営みや時間です。遠州織物は単なる素材ではなく、土地や技術、暮らしが織り込まれた文化だと感じました。今回のプロジェクトを通じて、その価値を新しい表現へとつなぎ、遠州と台湾、それぞれの魅力が自然に響き合う形を生み出したいと思います。
William Hsing:職人たちのものづくりに対する真摯な姿勢に、同じクリエイターとして見習うべきことが多いと感じました。台湾で作られる織物は化学繊維がほとんどです。遠州織物のように綿で作る織物の繊細さや、独特の風合いを大変興味深く拝見しました。今回のプロジェクトを通じて、遠州織物の魅力を発信する機会をいただき、光栄に思います。
You Florist:初日の訪問先で手に取った素材を使い、その日の夜すぐに作品を作ってみました。どの織物も素敵で、生地の選定に迷っています。作品のモチーフには(浜松の花である)ガーベラや富士山が良いのではと考えています。遠州織物が生まれた地域・国らしさを作品に込めたいです。
また、クリエイター側からは「改めて工場を訪問したい」「台湾の学生たちにも見学を勧めたい」という声が聞かれ、遠州産地の事業者からは、「台湾の織物工場を見学してみたい」といった話も上がりました。訪問をきっかけに、今後の相互交流につながる可能性も広がりを見せました。
今後の展開は、SNSにて配信!
今回の産地訪問の様子や商品化の過程、完成までの歩みは、下記SNSで順次発信しています。ぜひ続報をご覧ください。
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https://www.instagram.com/tapihito/
Instagram:@tapihito
主催:遠州産地振興協議会(事務局:浜松市産業振興課)




